サギが消え、田園荒れてファーム始まる

さぎ山は、その名の通り水鳥のサギが棲んでいた山。最盛期は1万羽もいたが50年前に姿を消した。見沼田んぼも都市化、農業後継者不足、土地の荒廃など変化にさらされていた。250年続く農家の萩原さんは「小学生たちが農家の暮らしを知らない」と気づき1997年にファーム・インさぎ山を立ち上げた。仲間たちとヨーロッパへ視察にいくなど研鑽を重ねた。親子の農業体験に始まり学校、企業、NPOなどを受け入れており、都内からの参加者も多い。食育、年中行事、セミナーなどイベントも実施し「農家の暮らしのありのまま」を見せている。

アートから今と未来が見える

アートイベントへの協力は、さいたまトリエンナーレ2016がきっかけ。萩原さんの夫、哲さんのがん余命宣告を受け「はなむけの思い」で始まった野外アート展「野良の藝術」は、2017年以来1年に1、2回さぎ山界隈で開く。企画は社会芸術ユニット・ウルスだ。代表の吉田富久一さんは「アーティスト以外でも創造性がある人たちと組みたい」という思いで活動を展開。炭焼き、燻炭焼きの実践から農と芸術の働きに発展した。「単なる、置き物、飾り、癒しに止まらない“生きる勇気”を復活させる活動をしたい」と意気込む。炭焼きを手掛かりに、縄文より続く野良の行く末にまで目を向ける。「アートは自己満足ではない。未来へ向かう創造性の共有。一気に社会を変えるのではないが、日々の積み重ねを通して、やがて社会の根本が変わる」と期待している。

「消えたら戻らない。」だから価値発見を

萩原さんは「ここの風景そのものがアートになる。花を活けてもいいし、農具を使ってもいい。お金をかけて、外から何か持ってこなくても、すでにあるものの価値を再発見できる。拾い起す、見つめ直すがキーワードでは」と地域アートの今後に一言。「地元の若い人を発掘し続けないと将来はない。子どもたちにアイデアを募集してもいい」とも。社会芸術と萩原さんとの共同企画で2021年「野良の藝術」では地元の美大生が運営に加わり、クラウドファンディング、シェアサイクリングなどのコラボも実現した。萩原さんは「自然が壊れたら二度と同じ風景は戻らない。それはサギが消えたことからも教えられる。自然は皆のものであるし、50年前にサギが警告を発してくれていたことを見つめ直し、自然との共生、見沼田んぼの存在価値、農村文化等を再確認し未来の子供たちに何が残せるか考えるべき時ではないか」と語った。

住所

さいたま市緑区上野田282

電話番号

090-5195-2183

代表

萩原 さとみ

HP/SNS

さいたま国際芸術祭レガシー事業 さいたまアーツセンタープロジェクト・市民サポーター事業(2021年度)