歴史ある書店として

岩槻駅から徒歩約6分の現在の場所に居を構えたのは江戸時代にさかのぼり、殿様について来た御用商人だった。はっきりとは分からないが、その頃から紙に関わる仕事に携わっていたようだ。明治になり、学制の導入によって教科書を扱う書店となり、地元民に愛される店として150年あまり。書店を本筋としてきたが、印刷業に手を広げたり学習塾を開いて経営を支えたこともあった。学習塾を開いていた裏手の家屋は現在、フリースクールの場として貸している。
入ってすぐ気がつくのは正面の歴史書と、奥にある子供が遊べるキッズコーナで、その周りにはずらりと絵本が並んでいる。絵本と歴史書はオウナーの水野夫妻がそれぞれ得意とする分野で力を入れている。また左手の平置き台には、その時々の話題に関連した本や、お勧めの本が並び、1ヶ月ごとに置き換えられている。

Cafe mao-maoの設立

本屋だけでは経営が難しくなるのを見越して、各地の書店を見て回り、いろいろな勉強会に参加して情報を集め、書店を仕切って皆が気軽に集えるコミュニティカフェをつくろうと決意。本を買った後ゆっくり読めるスペースが欲しいという客の声にも後押しされた。近くに岩槻人形博物館が開館して人の流れが変わるのを察知し、その前にオープンしたいと事業を進め、2019年にCafe mao-maoを書店に併設した。mao-maoという名前は、「くまのがっこう」という絵本に出てくるお母さん牛のマオマオからとったもので、孫の提案だ。

コミュニティカフェとしてのmao-mao

Cafeはイベントにも使用できるように設計され、白い壁は作品を展示したり、スクリーンとして使えるように考えられている。また天井にはプロジェクターやスポットライトも備えられている。
ふだんは地元民が気軽にランチを食べたりお茶が飲めるカフェで常連客も多い。イベントは場所貸しが基本だが、地元の人たちの活動を応援して盛り上げたいという想いが強い。
地元の絵本作家やアーティストたちのイベント、映画の上映会や歴史の勉強会など幅広いジャンルのイベントが開催されている。店内には電子ピアノがありコンサートも開かれる。様々なイベントが開かれているが、必ず「振り返り」を行い、新たなイベントに継ないでいくことを大事にしている。

これから

インタビュー中に訪れた常連客やフリースクールの子供たちに話しかける時枝さんには人を包み込むような温かさが感じられる。経営の中心として店を引っ張り、早くからデジタルによる発信に力を入れてきた時枝さんは働きすぎて体を壊したこともあり、あくせくせずに、書店としての基本理念を大事にしながら次世代につなげ、誰もが楽しめる場所にしたいと語る。

住所

さいたま市岩槻区本町4-2-10

代表

水野 時枝

HP/SNS

HP

アーツカウンシルさいたま 市民サポーター事業(2024年度)