ヘルシーカフェのら
店名である「のら」は《野菜で良くする。野菜で楽しむ》という意味があります。
お店の中に入ると、店頭には地元の野菜が販売されており、地域のあらゆる情報がチラシや書籍を通じて語りかけてきます。そして、店主の新井純子さんの明るい「はーい!」という声が響きます。純子さんによると、これらの情報は地域の人が企画したワークショップや、地域の課題解決に向けた取り組みが多いとのことです。
のらの存在は地域を集約したものであり、暮らしの中の「出会いの場」という印象で取材は始まりました。
孤独だった子育て経験
のらを始めたのは、「自身の孤独な子育ての経験」が大きいと純子さんは語ります。
当時は専業主婦はラクだみたいな風潮があり、転勤族だった彼女は誰にも子育ての辛さを打ち明けることができませんでした。ある日、公民館の学習会に参加し、孤独なのは自分だけでなく、地域の課題であることに気づいたと言います。この時に感じた「私の課題はみんなの課題」という意識がのらの根底に流れており、困っている人の課題に一緒に取り組むという寄り添うスタイルが生まれたのかもしれません。
地産地消
大量に生産して、流通し、消費される食糧たち。生産性や効率化を声高に叫ぶ世の中。「だからみんな疲れちゃうのよ~」と語る純子さんは、のらをそういった風潮と対極にある店にすることに決めたと言います。カフェで提供される野菜などの食材はほぼ、地域で収穫されたものを使用し、農家さんとのつながりを大切にしています。地元で採れたものを地元の人たちに楽しく食べてもらう。決して大きな経済がまわっているわけではないと語りながらも、作り手とお客様がつながることが何よりも豊かで、無理のない持続可能な仕組みであると話す姿はとても誇らしそうでした。
芸術について
そんな純子さんにとって芸術ってどんなものですか? 最後に直球の質問をしてみました。
「私にとって芸術は高いところにある話ではない。人間の表現であり、日々の暮らしの中にあるものかもしれない」。著名な作家の作品でなくとも誰かが大切に使用しているお茶碗は、その人にとって大切な芸術品である、という例えで教えてくれました。
2016年のさいたまトリエンナーレでは矢印の作品で関わったそうです。これからの芸術祭には市民の活力になる取り組みを期待していると話していました。